難しいお話が終わったのか、ロルフさんたちが僕たちのいるお部屋に帰って来たんだ。
「皆、待たせたな。細かい打ち合わせは終わったから、とりあえず今やれることをするとしようかのぉ」
「そうですわね。それではまず最初に、イーノックカウの居住権取得の手続きをしましょう」
キルヴィさんたちを自由にするには、僕が居住権ってのを取ってイーノックカウにお家を買わないとダメでしょ?
そのうち、居住権ってのは今いる冒険者ギルドでも取れるんだって。
だからまずはそっちをやっちゃおうって、ロルフさんとバーリマンさんは言うんだ。
「それではルルモア嬢、手続きをお願いできるかな?」
「はい。では書類をお持ちします」
ルルモアさんは居住権ってのをとるのに必要なものを取りに行くために、一人でお部屋から出てっちゃった。
でね、ロルフさんはそれを見送った後、今度はバリアンさんに声を掛けたんだよ。
「バリアン。すまぬがちとわしの館まで行って、ローランドを読んで来てはもらえぬかの」
「ローランドさんをですか?」
「うむ。ルディーン君が居住権を取るためには、わしが保証人にならねばならぬ。じゃが、流石に家の者に黙ってなる訳にはいかぬからな」
ローランドさんって言うのはね、イーノックカウの中にあるロルフさんのお家にいる執事さんの名前なんだ。
ロルフさんはね、自分の子供や孫たちに自分が保証人になるのを黙ってるのはいやだから、ローランドさんを呼んでその事をみんなに話してほしいんだってさ。
「なるほど。お立場を考えると、確かにその方がいいでしょうね」
「うむ。それとな、おぬしのパーティーメンバーが外でベニオウの実を見張っておるであろう? じゃが流石にいつまでもあそこに立たせておくのはしのびないからのぉ。近くにわしの家の者がおるじゃろうから、その者たちに声を掛けて錬金術ギルドに運び込むようにと伝えてくれ」
「解りました。それでは行ってまいります」
バリアンさんはそう言うと、ペコって頭を下げてからボルティモさんと一緒に出てっちゃったんだ。
それからちょっとしたらね、何枚かの羊皮紙を持ったルルモアさんが帰ってきたんだ。
「あら、深緑の風の皆さんはどちらへ?」
「ああ、ちとわしの家の者を呼びに行かせたのじゃよ」
でもさっきまで居たバリアンさんたちがいなかったもんだから、なんでって聞いたんだよ。
だからロルフさんは、お家まで行ってローランドさんを呼んで来てって頼んだんだよって教えてあげたんだ。
「ああ、そうでしたか。それでしたら、執事の到着を待ってから手続きをした方がいいですね?」
「いや、それには及ばんよ。あくまで家の者に、わしが保証人になる事を知らせるために呼んだだけじゃからな」
まずこの居住権ってのをとっちゃわないと、お家を買う事ができないんだって。
だから早く手続きをやっちゃわないと後が大変だからって、ローランドさんを待たずにやっちゃおうってロルフさんは言うんだ。
「そうですか。ではこちらの書類を読んで頂き、問題が無ければサインを頂けますか?」
「うむ」
ロルフさんはそう言うと、ルルモアさんから貰った羊皮紙に書いてあることを読んでから自分のお名前を最後の一枚の一番下んとこに書いたんだ。
それを見て次は僕の番だねって思ったんだけど、
「ルルモアさん。次は僕が読んで、そこにお名前を書くの?」
「いいえ、ルディーン君はサインをしなくてもいいのよ」
でもね、僕はお名前を書かなくってもいいよってルルモアさんは言うんだ。
「え〜、なんで? 居住権って言うの、僕がとるんでしょ?」
「ええ、そうよ。でも居住権の手続きが通ったら、そのお金はルディーン君のギルド預金から引き落とされるでしょ? ルディーン君は冒険者ギルドに入っているから、わざわざ本人確認をする必要が無いのよ」
さっき僕が商業ギルドに入ってないから、もし商業ギルドが僕のお金の運用ってのをしようとしたらそのたんびに僕んとこに来なきゃダメって言ってたでしょ?
それとは逆で冒険者ギルドに入ってれば、冒険者ギルドの預金を使ってこういう手続きをする時はわざわざほんとに僕ですよって確認しなくってもいいんだって。
「そういえば、そんな事言ってたね」
「この制度があるおかげで、いろいろな手続きが本当に助かってるのよ」
この居住権って手続きは冒険者ギルドでもできるんだけど、最終的にはイーノックカウの役所ってところに持ってかないとダメなんだって。
もし僕が冒険者ギルドに入って無かったら、その時一緒に役所に行かないといけなくなっちゃうそうなんだ。
「フランセン様のサインはイーノックカウの役所でならそれが本当かどうかすぐに解るから、わざわざご足労頂かなくても問題は無いの。でもルディーン君のサインは、それが本当にルディーン君のサインかどうかなんて役所の人には解らないでしょ?」
「そっか。だから僕のお名前が書いてあっても、本物かどうか解んないんだね」
冒険者ギルドに入ってると、僕が本物だよってギルドの人には解るでしょ?
だからロルフさんみたいにお名前を書く代わりに、冒険者ギルドが僕は本物ですよって役所ってとこに証明してくれるそうなんだ。
「そうよ。でもこの制度があるおかげで、この羊皮紙を持っていくだけで手続きが終わるってわけ」
ルルモアさんはそう言ってニッコリと笑うと、ロルフさんのお名前が書いてある羊皮紙を持ってドアの所へ。
その向こうには他のギルド職員の人が待ってたみたいで、
「それじゃあこれ、提出お願いね」
ルルモアさんはそう言うと、その職員さんに羊皮紙を渡したんだ。
ちょっと短めですが、キリがいいので今日はここまでで。
なのでその代わりと言っては何ですが、ちょっと裏設定を。
各種ギルドのギルドカードは一種の魔道具になっています。
でもカードと名がついている通り、薄い一枚の板状になっているので当然魔石なんてつけられませんよね?
ではどうやって動いているのかと言うと、このカードの中心には魔法金属が入っていて、それが魔石の代わりになっています。
実はこれ、この世界の武器や防具にも使われている技術だったりします。
よく剣や鎧、それに兜とかには大きな魔石がついたデザインのものがありますが、でも手や足の装備は駆動部分が多いのであまり大きな魔石は付けることができません。
なので魔石の代わりに、オリハルコンやミスリルのような魔法金属を真ん中に挟んだ3層構造の板を使って魔法の防具を作っています。
でもまぁそのおかげでこの世界では、胴鎧より手足の防具の方が高いなんて事があるんですけどねw